レッドデータブックとレッドリスト

世界に警告を発する赤い書・・・レッドデータブック

ッドデータブックとは、絶滅のおそれのある生き物に関する情報をまとめて本にしたものです。

表紙は文字通り真っ赤。 赤は警告の意味があるので、世界に警告を発する赤い本という訳で、「レッドデータブック」なのです。


1966年、スイスに本部を置く国際自然保護連合(IUCN)が、世界で最初のレッドデータブックを作成しました。

現在では各政府機関(日本では環境省)や地方自治体、各種団体がレッドリストやレッドデータブックを作成していますが、これらはすべて、IUCNのレッドデータブックに準拠しています。

単純に「レッドデータブック」あるいは「レッドリスト」と呼ぶ場合は、IUCN版、日本国内であれば、環境省版を指すのが一般的で、ここで取り上げる情報も同様です。

レッドデータブックは、国際的な保護活動や、条例・法律の整備に役立てられているのです。

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■レッドデータブックとレッドリストの違い      <click>

レッドデータブック

それでは、レッドデータブックとレッドリストって、どう違うのでしょうか…?

レッドリストは絶滅のおそれのある野生生物の名称(学名、和名等現地名)、カテゴリー等の最低限の情報のみをリストアップするもので、比較的短期間で作成することができます。


絶滅は驚異的なスピードで進行しており、のんびり調査して本にまとめていたのでは間に合いません。いち早く種をリストアップして、警告を発することが目的となります。


レッドデータブックはレッドリストの内容に加え、形態、繁殖・採餌等の生態、分布、生育・生息環境、生育・生息状況、絶滅の要因、保全対策等のより詳細な情報が盛り込まれており、掲載種の基本的な情報を得ることができる事典のような読み物になっているものです。


このように、レッドデータブックの作成には非常に時間がかかります。 ですから、多くの場合、まずレッドリストでいち早く名前を確定・公表し、後にその情報を基にレッドデータブックを作成するという方法が取られているのです。

■レッドリストカテゴリー(IUCN)      <click>

絶滅危惧種を語るにおいて、必要不可欠なのが「レッドリストカテゴリー」です。


レッドリストでは、個体数が減少している種について、その危険度に応じたカテゴリー分けをしています。 それがレッドリストカテゴリーです。

このカテゴリー分けは、絶滅の危険度を警告するだけでなく、保全対策の優先順位を決めるのにも役立っています。

報道や一般の雑誌などでは、「絶滅危惧種」でひとくくりにされていることが多いのですが、それにも危険度のランクがあることを覚えておいてくださいね。 IUCNのカテゴリー最新のIUCNカテゴリーは2001年に設定されました。


カテゴリーは、危険度の高い順に…


●絶滅(EX…Extinct)
   すでに絶滅したと考えられる種

●野生絶滅(EW…Extinct in Wild)
   飼育・栽培下であるいは過去の分布域外に、個体(個体群)が帰化して生息している状態のみ生存している種

●絶滅危惧ⅠA類(CR…Critical Endangered)
   ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い種

●絶滅危惧ⅠB類(EN…Endangered)
   ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種

●絶滅危惧Ⅱ類(VU…Vulnerable)
   絶滅の危険が増大している種。現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続いて作用する場合、近い将来「絶滅危惧I類」のランクに移行することが確実と考えられる種

●準絶滅危惧(NT…Near Threatened)
   存続基盤が脆弱な種。現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」として上位ランクに移行する要素を有する種

●軽度懸念(LC…Least Concern)
   基準に照らし、上記のいずれにも該当しない種。分布が広いものや、個体数の多い種がこのカテゴリーに含まれる。

●情報不足(DD…Data Deficient)
   評価するだけの情報が不足している種


以上8段階にカテゴリー分けされています。
この中の「絶滅危惧ⅠA類(CR)」「絶滅危惧ⅠB類(EN)」「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」に属する種が『絶滅危惧種』と呼ばれているのです。


■レッドリストカテゴリー(環境省版)      <click>

日本初のレッドデータブックは、1989年に日本自然保護協会、世界自然保護基金ジャパンから発行された、「我が国における保護上重要な植物種の現状(レッドデータブック植物種版)」です。
その後1992年「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」が成立し、IUCNのカテゴリーに準拠して、環境省が脊椎動物、無脊椎動物、維管束植物、その他の植物についてレッドデータブックを発行、水産庁が「日本の希少な野生水生生物に関するデータブック」を発行しています。
最新のカテゴリーは2007年。


●絶滅(EX)

●野生絶滅(EW)

●絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)
   ・絶滅危惧ⅠA類(CR)
   ・絶滅危惧ⅠB類(EN)

●絶滅危惧Ⅱ類(VU)

●準絶滅危惧(NT)

●情報不足(DD)


以上6段階のランク分けになっています。

環境省もIUCN同様、「絶滅危惧IA類(CR)」「絶滅危惧ⅠB類(EN)」「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」に属する種を『絶滅危惧種』と認定しています。


IUCN版の「軽度懸念(LC)」にあたるカテゴリーはありません。

絶滅危惧Ⅰ類は基本的に一つになっています。
分類できるものはA、Bに分類されますが、昆虫類、無脊椎動物、植物の一部はA、Bの区別がなく、Ⅰ類(CR+EN)にまとめられています。
また、日本独自のカテゴリーで、付属資料として…

●絶滅のおそれのある地域個体群(LP…Threatened Local Population)
というカテゴリーがあります。 これは、地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高い種になります。
例えば、「下北半島のホンドザル」や「九州地方のツキノワグマ」といったように、限られた地域に孤立した状態で、絶滅の危機に瀕している種が分類されています。

絶滅危惧種の現状  ※タイトルタブをクリックするとコンテンツボックスが開閉します。

■世界の絶滅危惧種数(IUCN 2011.01)   <click>

【用語の説明】
・既知種数:   すでに発見され、学名がつけられている種の数
・評価種数:   生息状況を調査・分析した種の数
・絶滅危惧種数:  絶滅危惧IA類(CR)+絶滅危惧IB類(EN)+絶滅危惧II類(VU)


【分類群別世界の絶滅危惧種数】
  既知種数 評価種数 絶滅危惧種数2009 絶滅危惧種数2010 絶滅危惧種数2011 既知数に対する割合 評価数に対する割合
【脊椎動物】              
哺乳類 5,494 5,494 1,142 1,131 1,134 20.6% 20.6%
鳥 類 10,027 10,027 1,223 1,240 1,240 12.4% 12.4%
爬虫類 9,362 3,004 469 594 664 7.1% 22.1%
両生類 6,771 6,312 1,895 1,898 1,910 28.2% 30.3%
魚 類 32,000 9,352 1,414 1,851 2,011 6.3% 21.5%
<小 計> 63,654 34,189 6,143 6,714 6,959 10.9% 20.3%
【無脊椎動物】              
昆虫類 1,000,000 3,338 711 733 746 0.1% 22.3%
軟体動物 85,000 4,419 1,036 1,288 1,570 1.8% 35.5%
甲殻類 47,000 2,399 606 596 596 1.3% 24.8%
サンゴ 2,175 856 235 235 235 10.8% 27.5%
クモ類 102,248 33 18 19 19 0.02% 57.6%
有爪動物 165 11 9 9 9 5.5% 81.8%
カブトガニ類 4 4 0 0 0 0% 0%
その他 68,657 52 24 24 24 0.03% 46.2%
<小 計> 1,305,250 11,112 2,639 2,904 3,199 0.2% 28.8%
【植 物】              
コケ類 16,236 101 82 80 80 0.5% 79.2%
シダ植物 12,000 293 139 148 158 1.3% 53.9%
裸子植物 1,052 963 322 371 374 35.6% 38.8%
顕花植物 268,000 12,761 7,948 8,116 8,477 3.2% 66.4%
緑藻類 4,242 13 0 0 0 0% 0%
紅藻類 6,144 58 9 9 9 0.1% 15.5%
<小 計> 307,674 14,189 8,500 8,724 9,098 3.0% 64.1%
【菌・原生生物】              
地衣類 17,000 2 2 2 2 0.01% 100%
菌 類 31,496 1 1 1 1 0.003% 100%
渇藻類 3,127 15 6 6 6 0.2% 40.0%
<小 計> 51,623 18 9 9 9 0.02% 50.0%
【総 計】 1,728,201 59,508 17,291 18,351 19,265 1.1% 32.3%

[出典: IUCN日本委員会 Webサイト]

■日本の絶滅危惧種数(環境省 2007.11)   <click>


【2007年環境省版レッドリストによる絶滅危惧種数】
  評価対象総種数 絶滅(EX) 野生絶滅(EW) 絶滅危惧種(CR+EN+VU) 準絶滅危惧(NT) 情報不足(DD) 絶滅危惧種数/評価総数(%)
【動 物】              
哺乳類 約200 4 0 48 16 9 24.0%
鳥 類 約700 13 1 92 18 17 13.1%
爬虫類 98 0 0 31 17 5 31.6%
両生類 62 0 0 21 14 1 33.9%
汽水・淡水魚類 約300 3 0 76 12 5 25.3%
昆虫類 約30,000 2 0 139 161 88 0.5%
陸・淡水産貝類 約1,000 25 0 251 206 69 25.1%
クモ類・甲殻類 約4,200 0 1 56 31 36 1.3%
<動物小計> -- 47 2 714 475 230 --
【植物等】              
維管束植物 約7,000 20 5 1,665 145 52 23.8%
蘚苔類 約1,800 0 0 180 4 54 10.0%
藻 類 約5,500 5 1 41 24 0 0.7%
地衣類 約1,000 3 0 45 17 17 4.5%
菌 類 約16,500 27 1 63 0 0 0.4%
<植物等小計> -- 55 7 1,994 190 123 --
<総 計> -- 102 9 2,708 665 353 --

■生きものを絶滅に追い込む脅威(要因)      <click>

脅威

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なぜ守るのか?      <coming soon>

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生物多様性について      <coming soon>

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世界的な保護の取り組み【国際条約編】      <coming soon>

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世界自然遺産      <coming soon>

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外来種の脅威と現実      <coming soon>

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